2020年 12月 27日
Ready Boost か eBoostr か |
Ready BoostもeBoostrもディスクキャッシュを提供する。一時期結構勘違いされていたが「メインメモリの不足を補う技術」ではないのでご注意を。
eBoostrにしろReady Boostにしろ、USBメモリのキャッシュから読み出すという事はHDDアクセスが減るという事でもあり、HDDの寿命改善、消費電力の改善も期待できるのでノートPCには特に有意義に思える。ただし具体的にどのぐらい消費電力を改善するのかは場合によるので過度な期待はしない方がいいだろう。少なくとも電池寿命が倍になったりはしないと思う。あと、ノートPCの場合、挿したまま持ち運ぶと引っ掛けたり落としたりした際にPC本体の基板を損傷するリスクもあるので基本、挿したまま持ち運ぶのは推奨しない。うちでは極端に小さいタイプを挿したまま持ち歩いているがあくまで「自己責任」である。そして極端に小さいタイプは何故か性能が若干低い。
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Windows Vistaで新規に導入されたReady Boostは実装メモリが不充分な機体の救済策の印象が強かった。実際にはメモリ不足をどうにかしてくれるわけではなかったわけだが誤情報が錯綜して理解が広がらなかった感はあるよね。
元々XPの頃から、いやそれ以前のNTでも、Windowsは剰余メモリを[あるだけ]ディスクキャッシュに使う仕様になっていた。実はこれがとても「効いて」いて、空きメモリが実装の半分を割り込むと如実に「重く」なる傾向があった。例えば、日本語入力時には辞書データベースを読み込んで検索するので、ディスクキャッシュが少なくなるともたつくようになる。Ready Boostはこの「余剰メモリの不足」を補う技術と思ってよいだろう。
XP時代にUSBフラッシュメモリ(以下「USBメモリ」)が登場した。これに呼応するようにVistaではReady Boostが実装された。Ready BoostはHDDよりランダムアクセスの速いUSBメモリにディスクキャッシュを置く事でメインメモリキャッシュ程ではないまでもHDDのみより応答を改善しようとしたのだが、USB2ではPCの応答を劇的に改善できたとは言い難かった。そしてUSB3が普及する頃には深刻なメモリ不足の機体は比較的少数派になり、その上SSD(ランダムアクセスもUSBメモリより速い)の普及でReady Boostが役立つ局面は更に減ってしまった。
Ready Boostはシャットダウンでクリアされてしまう仕様なので、Windowsの起動(ブート)シーケンスの加速はほぼない(※)。また、ブート直後のアプリケーション起動も改善しない。キャッシュに書き込むため最初の1回はどうしてもHDDから読み出す必要がある。Ready BoostはUSBメモリを使うという性格上、いつ抜かれてもWindowsの動作に支障をきたさない安全性を最優先した結果、MSはシャットダウンでリセットする設定を選択したのだろう。キャッシュ内容を記憶し、リブート後も引き継ぐ設定ならWindows OS自体の起動も高速化しただろうし起動直後のアプリケーション起動も加速できたのは明らかで、期待した人達にとってはかなりのがっかりポイントとなった。
※"Ready Boot"という技術が別途あって、それにより起動時間の短縮も実現しているとする記事も見かけたが体感した事はない。
後に、SSHD、Optaneキャッシュといった、ハードウェア側でSSDを使ってHDDのキャッシングを行い応答を改善する技術が登場してReady Boostの立場はますます日陰になっていく。尤も、SSDの普及が既にかなり進み、それまでの過渡期のツナギでしかなかったSSHDやOptaneキャッシュもさして普及する事なくフェードアウトしつつある。ちなみにこれらハードウェアによるSSDキャッシュは電源を切っても内容を保持する(電源投入直後から効く)ためOS(つまりWindowsでなくても)起動も加速してくれる。
尚、今やReady Boostは無意味かと言うとそうとも言い切れない。Windowsのメモリ要求は日に日に増加する傾向にあり、実績的には3~5年で倍増する。つまり今8GB搭載機はまだそこそこ使えているが、もうすぐ足りなくなってくる。4GB実装機なんて既にドロドロだろう。16GBに増設できれば延命できるがちょっと古い機体だとハードウェア上の制限でこれ以上増設できない事がある。その対応としてHDDをSSDに換えるか、Ready Boostを使うという選択肢が浮上する。勿論どちらも絆創膏的措置であり、最終的には新しい高性能なPCを買う事になるのだろうが、それを先送りにするためには有効だ。あと数年使うならSSDを買って、システムを入れ替えて交換してという手間とお金もかけようがあるが、1年ぐらいで新しいPCを考えているのならReady Boostで「間に合わす」というのも有効な一手となり得る。
「イーブースタ」と発音するらしい。Vistaが発表されてすぐ、Ready BoostがXPでも使えればとの希望に応える形で登場した。商品である。当然値段がついている。現在のver.4は3,800円/台。ただし記事を書いている現時点では千円割引中。
eBoostrはアプリケーションでReady Boostと同様の機能を提供する。と、それだけならXPにのみ有効でVista以降のWindowsには用なしだろうと思えるがさにあらず。eBoostrはReady Boostが備わったVista以降のWindowsでも優位性を発揮できるよう工夫されている。最も大きな違いは「学習したキャッシュ内容を保持したままリブート」できる事。これによりWindowsの起動もちょっとだけ早くなる。実際にはアプリケーションで機能を提供しているため、電源投入直後から効くわけではなく、あくまでもeBoostrのサーヴィスが起動した後からしか効かない。ネット情報によれば実際には「サインイン画面が出るあたりから」効き始めるらしい。実際アクセスランプのあるUSBメモリを使って起動時に眺めていると、サインイン画面になる少し前からしきりに点滅し始める。そして確かにそれ以降の所要時間は少し短くなっているようだ(面倒なので実測はしてない。御免)。8BG実装、7,200rpmのHDDの機体にUSB2のUSBメモリを使ってeBoostrを組み込んでみたら体感上応答が改善しているようなので、HDDが省電力志向の5,400rpm品だったりノートPCだったらもっと効果が大きく感じられるだろうし、USBメモリもUSB3なら更に効く可能性が高い。
eBoostrがReady Boostと違うのは「シャットダウンしてもキャッシュ内容を覚えていて次回以降起動時から効く」だけではない。他にも「優先的にキャッシュするアプリケーションを指定できる」「キャッシュ[しない]ファイルやフォルダを指定できる」というのも、限られたキャッシュ領域を有効に使う上で有用だ。更に「暗号化しない」という選択もできる(正確にはver.4になって暗号化機能が追加され選択できるようになった)。Ready Boostでは暗号化・圧縮がデフォルトであり選択肢はない。暗号化には当然CPUパワーを使うわけだから、CPUパワーの低い機体ではそれを辞める事で更に応答の改善がある。ただし当然USBメモリを抜いて持って行かれたらその内容は読み出せてしまう事になるのでリスクは自己責任になる。あと、4GB以上実装した機体を32bitOSで使うとOSが認識できないメモリ領域ができるが、eBoostrはこの領域も超高速キャッシュ領域として利用できる。これらが効いたのか、うちのWindows10 32bit版のThinkPad(4GB実装)ではWindowsの起動時間が同じUSBメモリをReady Boostに設定した状態より30秒ぐらい短かった(2分半→2分)。正直、この「OS起動の加速」と「OS起動直後のアプリケーション起動の加速」という一番メリットを体感できる部分をReady Boostは捨ててしまったわけだ。実に惜しまれることだと思う。
eBoostr、いい事尽くめのようだが、システムに深く関わるMS社外ソフトなので、稀に不都合もある。OSが起動するとキャッシュ機能が勝手にoffになっていたりする。これに関しては後日対策を見つけた人の記事を見つけたが、自力ではどうにもできなかった。また、一部古い機体でシャットダウンにやたら時間がかかる物もあった。中には24時間放置してもシャットダウンが終了せず電源ボタン長押しで強制シャットダウンした機体も。eBoostrをアンインストールしたら直ったので相性なのだろう。このような不具合が起きたら自分で対処できる人にしか薦められない。例えばその対処で僕を呼んだら問答無用でeBoostrを買った値段より請求される。割に合うとは思えない。Ready Boostで間に合わせとく事をお薦めする。ただしeBoostrは試用モードで毎回OS起動時から2時間に限りフル機能を利用できるので、購入するかは試してみてから考えるという手もある。再起動すれば何度でも2時間は使えるので、毎回起動から2時間以内に用が済んでしまうような使い方の人には試用版だけで事足りてしまうかも知れない。うちでもそうしてる機体がある。
あなたはどっちを使う?>
eBoostrはさすがに商品なだけあってReady Boostより優れている点が多い。しかし3,800円出してまで採用したいかは各自で判断して戴くしかない。てかメインメモリを潤沢に積んでシステムをSSDにした方が遥かに快適になるので、どっちかを使わなければならない状態自体もう少数派とは思うけど。
by afternaito
| 2020-12-27 02:46
| PC
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